2012年4月2日月曜日

日立再建 脱・総合電機への険しい道

日立製作所が「総合電機」の路線から転換し、復活を目指す。大胆な改革で、収益力を向上させることが急務だ。日立は、日立マクセルなど上場子会社5社に対し、株式公開買い付け(TOB)を開始した。5~7割の出資比率を100%に引き上げ、今年度内に完全子会社化する方針である。

日立は今年3月期決算で、国内企業で最大の7873億円の連結最終赤字となった。今期も巨額赤字が予想される。重厚長大を代表する日本のトップ企業だった日立が、新興国企業の追い上げなど、激変する経営環境への対応につまずき、業績低迷から抜け出せない。

原子力発電から半導体、家電まで、何でも手がける「総合電機」は、総花的な経営を招き、苦境に陥る要因になったといえよう。

日立本社とは対照的に、日立マクセルなど5社は、ハイブリッド車向けのリチウムイオン電池や、次世代情報システムなど有望な成長ビジネスを手がける。好調な子会社を完全に取り込み、日立グループの底上げを狙うのは妥当な判断だろう。

これを機に、事業の「選択と集中」を進め、総合電機からの脱却に弾みをつける必要がある。親会社と子会社がともに上場する「親子上場」は、日本企業独特の経営手法とされる。日立がこれを見直す利点は、5社が稼いだ利益を少数株主への配当などでグループ外に流出させず、収益増を期待できることだ。

しかし、巨艦・日立が業績を早期に回復できるかどうか、展望は不透明だ。5社を囲い込んでも、巨額赤字の穴埋めには、とても及ばないからだ。甘い企業体質の抜本的な改革が欠かせない。日立の上場子会社は、5社以外にも11社あり、連結子会社は900社超に上る。

巨大グループに分散する重複事業を再編して、効率化を図り、経営資源を成長分野に集中できるかどうか。赤字事業からの撤退、非中核部門の子会社売却など、課題は山積している。リストラ頼みで事業を縮小するだけではなく、技術革新などで競争力を回復し、収益基盤を強化することが大事だ。

こうした日立の試みは、世界不況の克服をめざす日本の産業界にとっても教訓になる。新興国市場の急成長など、世界が激動する中、新たな成長戦略を描き、有望な事業拡大に先手を打つ姿勢が各社に求められよう。