こういう重大な外交的結果をもたらすことが十分予想される問題について、外務省が事前に相談も受けないという事実を知ったときの無力感、しかも、その後始末の苦労は押し付けられるやりきれなさ、そしてあえていえば、そういう外務省に対する扱いに対しても毅然とした態度がとれない幹部に対する不満と若い事務官たちの憤り、いま思い出しても心の中がどす黒く渦巻く思いがする。
さらに深刻なことは、以下に述べる他の問題を合わせ考えていくと、この地盤沈下傾向に歯止めをかける見込みもあまりないことだ。若くて元気のある外交官ほど、このままでいいのかとか、外務省が今のままだったら転身するしかないとか考え込む者が多くなっていると聞く。
外交官の仕事をやりにくくする大きな原因の一つに、「国内基盤がない」という問題がある。前にも述べたように、今日の外交問題のほとんどは、外務省の一存で決めることができない性質のものばかりである。つまり、外務省が外国と折衝し、交渉する前に、ほとんどの問題について国内的に権限をもっている官庁(所管官亡と方針を協議し、決定するという手続きを踏まなければならない。そして、外国と折衝した結果が当初の方針と合わなければ、再び国内的な協議、決定という手順を踏むことになっている。
仮に外務省がこういう「根回し」をしないで独断専行したら、所管官庁はそっぽを向いてしまうだろう。その場はなんとか収められるとしても、所管官庁は、「このツケは必ず払わさせる」といったやくざまがいの発想を胸の中に固くしまい込むだろう。だから外務省としては、自民党実力者の積極的支持や政府首脳の圧力でもない限り、そのような冒険はおいそれとはできない。
2015年6月17日水曜日
巨人々を震揺させた対抗馬
ちいさな穴を未然に防ぐのが、組織部員である。これは各課に二名いるのだが、職場委員や経協委員とおなじように、職場長の任命制である。誰が組織部貝か、一般の組合員には不明である。だから、組織部員は、職場では、「特高」とも「ゲ・ぺ・ウ」ともいわれたりする。研修会でみっちり労使協調の思想教育を受け、組合の活動で忠誠心を発揮し、やがて「総括」とか「係長」のポストについたものがなっているようだ。
職制と役員の二重人格で、次期の組合役員を選んだり、日産機動隊とよばれるハネ上がり分子を指揮したりする。部課長といえども、組織部員には一目も二目もおく。にらまれたら、彼の部下の統率にひびく。特高といわれるのは、そのためである。もちろん、仕事は、労働者の日常の監視と評定である。日産では、三日以上の休暇をとるときは、課長と職場長(組合役員)に「行動計画案」を提出する。誰と、いつからいつまでどこへ、なんの目的でいくか、を記入する。それが慣習となっているので、新婚旅行へ出発する労働者に、「何の目的でいくのか」ときいてしまった、との笑い話もある。
日産労組の来年の活動方針の柱は、P3運動である。これは、一九七七年から、生産性向上運動のキメ手として、日産共栄圏ぐるみですすめられているものだが、それを、さらに国レベルですすめていこうとするところに特徴がある。毎年一〇パーセントの生産性向上、毎年二〇パーセントの不良削減、「運動方針」には、こう書かれている。この運動は、産業企業の健全な発展を通じて、労働者福祉の向上・国民福祉の向上を求めていくものであり、三つのPは次のような意味をもっている。
①働きがい、生きがいの追求
P3運動は、自動車労連のすべての仲間が協力し、労働者参加による生産性向上運動を展開し、労働者および国民福祉の向上につなげていこうとするものであり、働きがい、生きがいを追求する活動の一環として推進する。
②労使協議による推進
生産性の向上には、労使関係の近代化、経営の民主化、とくに労働者の参加、労使の協議、協力が不可欠である。したがって、この運動は企画、実施、評価のあらゆる段階で、また労連段階、組合段階、職場段階で、労使が十分な協議を行いながら推進する。
③産業段階、国の段階等における発言力の強化
自動車産業の動向は、産業段階における経営者の政策や、国や地方自治体の産業政策によって大きな影響を受ける。したがって、産業、国、地方自治体等の政策に対するわれわれの発言力、影響力を強化していく。
賃上げの反対意見を暴力で封じようとしたリンチ事件にたいして、東さんたちは猛然と反撃を開始した。ビラやパンフをつくって地域の組合へ訴えて共闘態勢をつくり、集会をひらき、日産本社へ押しかけ、告訴し、記者会見した。これらが新聞で報道され、おりからの小型車国際戦争激化の情勢もあって、海外でも大きく報じられることになった。合理化工場の秘密の暴露である。それに力をえた東さんと嘉山さんは役員選挙に立候補した。追撃である。対立候補の出現は、日産労組史上はじめてのことだった。というのも、立候補者には「拡大職場委員会」の推せんが必要とされ、反対派が推せんされることはないから、事実上、対立候補者はあらわれない仕組みである。
職制と役員の二重人格で、次期の組合役員を選んだり、日産機動隊とよばれるハネ上がり分子を指揮したりする。部課長といえども、組織部員には一目も二目もおく。にらまれたら、彼の部下の統率にひびく。特高といわれるのは、そのためである。もちろん、仕事は、労働者の日常の監視と評定である。日産では、三日以上の休暇をとるときは、課長と職場長(組合役員)に「行動計画案」を提出する。誰と、いつからいつまでどこへ、なんの目的でいくか、を記入する。それが慣習となっているので、新婚旅行へ出発する労働者に、「何の目的でいくのか」ときいてしまった、との笑い話もある。
日産労組の来年の活動方針の柱は、P3運動である。これは、一九七七年から、生産性向上運動のキメ手として、日産共栄圏ぐるみですすめられているものだが、それを、さらに国レベルですすめていこうとするところに特徴がある。毎年一〇パーセントの生産性向上、毎年二〇パーセントの不良削減、「運動方針」には、こう書かれている。この運動は、産業企業の健全な発展を通じて、労働者福祉の向上・国民福祉の向上を求めていくものであり、三つのPは次のような意味をもっている。
①働きがい、生きがいの追求
P3運動は、自動車労連のすべての仲間が協力し、労働者参加による生産性向上運動を展開し、労働者および国民福祉の向上につなげていこうとするものであり、働きがい、生きがいを追求する活動の一環として推進する。
②労使協議による推進
生産性の向上には、労使関係の近代化、経営の民主化、とくに労働者の参加、労使の協議、協力が不可欠である。したがって、この運動は企画、実施、評価のあらゆる段階で、また労連段階、組合段階、職場段階で、労使が十分な協議を行いながら推進する。
③産業段階、国の段階等における発言力の強化
自動車産業の動向は、産業段階における経営者の政策や、国や地方自治体の産業政策によって大きな影響を受ける。したがって、産業、国、地方自治体等の政策に対するわれわれの発言力、影響力を強化していく。
賃上げの反対意見を暴力で封じようとしたリンチ事件にたいして、東さんたちは猛然と反撃を開始した。ビラやパンフをつくって地域の組合へ訴えて共闘態勢をつくり、集会をひらき、日産本社へ押しかけ、告訴し、記者会見した。これらが新聞で報道され、おりからの小型車国際戦争激化の情勢もあって、海外でも大きく報じられることになった。合理化工場の秘密の暴露である。それに力をえた東さんと嘉山さんは役員選挙に立候補した。追撃である。対立候補の出現は、日産労組史上はじめてのことだった。というのも、立候補者には「拡大職場委員会」の推せんが必要とされ、反対派が推せんされることはないから、事実上、対立候補者はあらわれない仕組みである。
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