2015年10月17日土曜日

コングロマリット経営を批判する

企業はまずドックの事業を捨てます。そしてキャッシュ・カウで得たキャッシューフローを問題児につぎ込み、スターになるよう注力します。スターは市場が成熟していくにつれ、さほどキャッシューフローを投資に振り向ける必要性も少なくなっていきます。時間とともにキャッシューカウヘと変化していくのです。

実はこうしたマトリックスの考え方は、もはや米国では通用しにくくなっています。アメリカでは、コングロマリットは株式市場でディスカウントされ、ピュアプレイが好まれるように変わってきているのです。「事業を四つのドメインに分けて、Aで儲けキャッシューフローをBに投入する」。そんなことは「企業という舞台」の上でやるべきではありません。株式市場という「市場の場」で投資家が好きずきに行なったほうが、はるかに効率的なのです。

こうした理論の変遷もあって、日本の大企業経営者が海外の機関投資家に会いますと、「必ず」と言っていいほど、コングロマリット経営を批判されてしまいます。これに対して日本の経営者がコングロマリット経営を擁護するのに使うロジックがあります。一つは、シナジー(相乗効果)あるいはヴァリュー・チェーン(Value Chain)といった考え方です。

先の例で言えば、半導体とパソコンの両事業の間にはシナジーが認められるというものです。もう少し分かりやすく説明しますと、たとえばパソコンメーカーにとっては半導体事業を持つことで半導体の安定供給が得られます。こういった「目に見えぬ利点」が認められるから一つの傘の下で両事業を併せ持つことにはそれなりの意味があるとする説明です。一石の事業の価値(ヴァリュ上があたかも鎖(チェーン)で結ばれているがごとく密接にからみあっているとの説明です。

残念ながら海外の機関投資家にはこうした説明は、多くの場合、単なる言い訳としか受け取ってもらえません。パソコンメーカーが半導体を使う場合、多くの半導体メーカーに競争させて、できるだけ品質の高いものを低価格で仕入れたほうがよいに決まっているからです。自社ブランドに固執する必要はないのです。