2015年7月18日土曜日

「国内基盤」のなさ

こういう重大な外交的結果をもたらすことが十分予想される問題について、外務省が事前に相談も受けないという事実を知ったときの無力感、しかも、その後始末の苦労は押し付けられるやりきれなさ、そしてあえていえば、そういう外務省に対する扱いに対しても毅然とした態度がとれない幹部に対する不満と若い事務官たちの憤り、いま思い出しても心の中がどす黒く渦巻く思いがする。

さらに深刻なことは、以下に述べる他の問題を合わせ考えていくと、この地盤沈下傾向に歯止めをかける見込みもあまりないことだ。若くて元気のある外交官ほど、このままでいいのかとか、外務省が今のままだったら転身するしかないとか考え込む者が多くなっていると聞く。

外交官の仕事をやりにくくする大きな原因の一つに、「国内基盤がない」という問題がある。前にも述べたように、今日の外交問題のほとんどは、外務省の一存で決めることができない性質のものばかりである。つまり、外務省が外国と折衝し、交渉する前に、ほとんどの問題について国内的に権限をもっている官庁(所管官亡と方針を協議し、決定するという手続きを踏まなければならない。そして、外国と折衝した結果が当初の方針と合わなければ、再び国内的な協議、決定という手順を踏むことになっている。

仮に外務省がこういう「根回し」をしないで独断専行したら、所管官庁はそっぽを向いてしまうだろう。その場はなんとか収められるとしても、所管官庁は、「このツケは必ず払わさせる」といったやくざまがいの発想を胸の中に固くしまい込むだろう。だから外務省としては、自民党実力者の積極的支持や政府首脳の圧力でもない限り、そのような冒険はおいそれとはできない。