2014年4月17日木曜日

局地経済圏

ここしばらくのあいだになされた新規の日本・NIESの対ASEAN投資はいずれもアウトソーシング型が中心であり、それゆえASEAN諸国の輸出拡大に果たした日本・NIES企業の貢献にはきわめて大きいものがあったといわねばならない。日本・NIES企業のアウトソーシング志向を反映して、対日輸出と同時に対NIES輸出が急増し、そのことによってNIESHASEAN間の貿易関係がこのところ急速に緊密化していることが注目されねばならない。ASEAN諸国の対日・対NIES輸出の拡大の背後に、日本やNIESの企業の対ASEAN進出があったことは明らかである。

ところで、東アジアにおけるこの構造転換連鎖の波は、アジア社仝主義国におよんでいく可能性はあるのか。その可能性は大であろう。アジアにおける冷戦構造の「溶解」を契機に、アジア社会主義国と、それを取りまく東アジア諸国とのあいたに潜在してきた補完関係がにわかに顕在化し、これが今日の東アジアにおけるきわめてアクティブな市場単位になろうとしている。この市場単位を私は「局地経済圏」と名づける。

台湾と中国福建省を取り結ぶ「海峡経済圏」、韓国西海岸と山東省から構成される「環黄海経済圏」、香港化の道を急速に歩む広東省を中核にした「華南経済圏」、タイがインドシナ三国と取り結ぶ「パーツ経済圏」などが、アジアの経済地図をぬりかえる新しい主役として登場してきた。吉林省と北朝鮮との国境を流れる豆満江の河口部に集う、ナホトカーウラジオストクーボシェット(旧ッ連)、延吉・璋春(吉林省)、羅津・先鋒・清津(北朝鮮)の諸都市を含んだ「図椚江経済圏」、さらにその外縁を大きく取り囲む「環日本海経済圏」の構想も見え隠れしてきた。

ここでの関心は主として中国である。中国と周辺NIESが取り結ぶ局地経済圏が今日相当の密度で形成されており、この局地経済圏が東アジアのダイナミズムを中国に伝播させるきわめて重要な「媒体」として機能していると私はみる。中国をめぐる局地経済圏形成の主役は、なによりも香港、台湾、韓国などのNIESである。NIESは、中国の沿岸省市と密度の濃い経済的連携を形成し、後者を東アジアに引きだしていく最も強い活力を擁するグループにほかならない。